英語の発音がきれいなジャズシンガーがいる

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 東京・中目黒のカフェで会った。聞くと、小さい時から歌が好きで、10代のころ「耳コピ」で洋楽を覚え、バンドで英米の70年代のロックなどを歌っていたという。高3の時に米国西海岸へ旅行。

 「とにかく発音が通じない。学校で習ったことが役に立たないと知りました」

 ここまではありがちだが、その後が違った。独学ではだめだと気づき、会社勤めを辞めて英国に語学留学した。帰国後も英語の歌や発音を習おうと何人かの先生につく。「それがよかった」という。 例えばどんな?

 「日本人は舌べろの奥の筋肉が強く、英語を話す時に巻き舌をし過ぎる。舌をすぐ引っ込めてしまう。だから音がこもると言われました」

 そういえば、Rを意識するあまり何でもかんでも巻き舌ふうに発音する人がいる。

 彼女が習ったトレーニング法が面白い。口から舌をべろーんと出したまま「あああああ」「ままままままま」と発声する。出したまま音程を上げたり下げたりする。

 実演してくれた。いい人だ。やってみてほしい。英語の発音が向上するはずだ。

 現在は英語の歌唱指導もしている。もしカタカナ発音しか出来ない歌手に教えるとしたら、どこから教えますか。

 「そうですね。“My name is Hiroko Williams”(私の名前はウィリアムス浩子です)と言う場合、日本人は『マイ、ネーム、イズ、ヒロコ、ウィリアムス』と切ってしまいがちです。これを『ムアィヌエイムイ~ズッヒィロクゥオゥウィリアムス』と一語のようにつなげて、一息で出す。そのトレーニングを何度もやってもらいます」

 私もやってみた。まるで筋トレだ。なんとか一息で言うのは出来た。でも口の動きが小さい。それに比べて目の前の彼女の口の動くこと動くこと。すぼめ、上下に開き、左右に広がり、また閉じる。これが英語の口の動きなのか。中学・高校で教わった人はどれくらいいるだろう。

 「伝えるため、表現するためにスキルを磨き、鍛える。芸術やスポーツと同じです」

 昨年12月、東京・渋谷のライブに行った。初めは英語に感心したが、いつのまにか歌の世界にひたり、発音など忘れて拍手していた。=敬称略